ユニバーサルコントロール(Universal Control)は、macOS Montereyから導入された新しい機能です。この機能を使用することにより、一つのMacから他のMacやiPadを操作したり、入力デバイスを共有したり、同時にファイルを共有したりすることが可能になります。
ただし、この機能には利用できるMacに制限があり、macOS Monterey以降をサポートしているMacでも、モデルによってはこの機能が制限されています。
本稿ではOpenCore Legacy PatcherとFeatureUnlockを利用して、非対応のMacでもUniversal ControlやSidecarの利用制限を解除し、使用する方法についてまとめました。
目次
概要と目的
本稿はmacOS MontereyやmacOS Venturaが対応していないMacと対応しているMacのうち、macOS Monterey以降に追加されたUniversal ControlやmacOS Catalina以降に追加されたSidecarなどが利用できないMacで、これらの機能を使用できるように制限を解除することを目的としています。
ただし、制限を解除できたしても、予期せぬトラブルや快適性に関しては保証できるものではないことに留意して頂ければと思います。
この制限の解除を実現するにはmacOS Big SurやmacOS Venturaなどが非対応のMacにこれらのOSをインストール可能にするOpenCore Legacy Patcherを使用します。
前述の通り、本稿ではmacOS Big SurやmacOS Monterey、macOS Venturaが正式にサポートされているMacも対象です。
しかし、FeatureUnlockに関する設定(SMBIOSのスプーフィング)の操作や設定を誤るとMacが起動できなくなる可能性があるため、作業前には必ずデータをバックアップし、手順をよく確認した上で作業に当たってください。
Universal Controlの要件
以下にユニバーサルコントロールを使用する際の要件を示します。
技術要件
- Wi-Fi 4 (802.11n)
- Bluetooth 4.0
- macOS Monterey 12.4以上
- iPadOS 15.4以上(該当する場合)
- OpenCore Legacy Patcher 0.4.3以上
以下のモデルのテーブルを確認し、ハードウェアをアップグレードする必要があるか、または具体的にどのハードウェアが変更を必要としているかを確認してください
その他の要件
- 全てのデバイスが同じiCloudアカウントにサインインしていること。
- Apple IDで二段階認証が有効になっていること。
- BluetoothとWi-Fiが有効になっていること。接続されている必要はありませんが、有効にしておくことが必要です。
- iCloud設定からHandoffがオンになっていること。
- 対象のデバイスが近接していること。
これらの要件を満たしている場合、Universal Controlを利用してMacやiPad間でスムーズに操作を行うことが可能になります。
Universal Controlの制限と対応策
Universal Controlは、あるMacから他のMacやiPadを制御し、同時に入力デバイスやファイルを共有することが可能になります。macOS 12 Montereyで導入されたこの機能は、ある一定の技術要件を満たす限り、OpenCore Legacy PatcherやFeatureUnlockを使用して非対応のMacでも利用することができます。
しかし、全てのMacがUniversal Controlを利用できるわけではありません。一部のモデルはAppleによってUniversal Controlの使用がブロックされています。
AppleによりUniversal Controlの使用がブロックされたMac
以下のモデルはAppleによりUniversal Controlの使用がブロックされています。
- MacBookAir7,x – MacBook Air Early 2015 11″ / 13″
- MacBookPro11,4 – MacBook Pro Mid 2015 15″ (Intel Iris)
- MacBookPro11,5 – MacBook Pro Mid 2015 15″ (dGPU)
- MacBookPro12,x – MacBook Pro Early 2015 13″
- iMac16,x – iMac Late 2015 21″
- Macmini7,x – Mac mini 2014
- MacPro6,x – Mac Pro Late 2013
これらのモデルのハードウェアはUniversal Controlをサポートする要件を満たしていますが、Appleによってブラックリストに追加されているため、Universal Controlを使用することはできません。
ブラックリストに追加されたモデルでUniversal Controlを使用する唯一の解決策は、そのSMBIOSをスプーフィングすることです。SMBIOSスプーフィングは、macOSの一部を異なるマシン上で動作していると思わせるものです。
SMBIOSスプーフィングを使用すると、Universal Controlのハンドシェイクが異なるSMBIOSを認識し、ブラックリストに掲載されたMacが他のMacやiPadとUniversal Controlで接続することができるようになります。
SMBIOSのスプーフィングの注意点
SMBIOSスプーフィングはOpenCoreの高度な機能であり、不適切に使用、設定すると重要な機能を破壊し起動に問題が生じるなど、データ資産を毀損する可能性があります。SMBIOSのスプーフィングを行った場合には必ずOpenCoreを経由してmacOSを起動するようにしてください。OpenCoreを経由せずにmacOSを起動すると、システムに不整合が生じ、不具合を引き起こす可能性があるためです。
制限の解除: SMBIOSのスプーフィング
SMBIOSのスプーフィングは使用しているOSにより設定方法が異なります。
macOS Venturaにおけるスプーフィング
▼ まずはOpenCore Legacy Patcherをダウンロードし、実行します。
メインメニューが表示されたら「Settings」をクリックします。
※ 本稿ではOpenCore Legacy Patcher 0.6.6を使用しています。0.6.5以前のバージョンではUIが異なります。詳しくはこちら
▼ 画面が切り替わったら「SMBIOS」タブをクリックします。
▼ 「SMBIOS Spoof Level」の下にあるプルダウンメニューをクリックします。
▼ そして「SMBIOS Spoof Level」を「Moderate」に設定します。
▼ 「SMBIOS Spoof Model」とある下のセレクトボックスをクリックします。
▼ 「SMBIOS Spoof Model」を下記の表で自分のネイティブモデルを探し、その隣にある「Spoof SMBIOS」列にあるSMBIOSを選択します。
例) MacPro6,1を使用してる場合には、MacPro7,1を選択します。
▼ ここまでの設定が完了したら「Return」をクリックし、メインメニューに戻ります。
続いて、「設定の適用: OpenCoreのビルドとインストール」セクションを参考にし、OpenCoreをビルドし、ESPにインストールします。
※「Allow native models」および「Allow Native Spoofs」は、macOS Montereyとは異なり有効にしません。これは意図的なもので、macOS Venturaではこれらの設定が関連していないため、これらを有効にするとmacOSが起動しなくなる可能性があります。
スプーフィングモデル
下記の表を参考にお使いの機種に対応するモデルを指定してください。
スプーフィングモデルの表には、macOS Venturaがネイティブでサポートしている直近のMacが選ばれています。これらのモデルへスプーフィングを行うと、通常は問題なく動作します。
モデル名 | SMBIOS (元の機種 ID) | Spoof SMBIOS (変更後) | Tested | Tested by |
---|
MacBook Air Early 2015 11″ / 13″ | MacBookAir7,x | MacBookAir8,1 | NO | N/A |
MacBook Pro Early 2015 13″ | MacBookPro12,x | MacBookPro14,1 |
MacBook Pro Mid 2015 15″ | MacBookPro11,4 / 11,5 | MacBookPro14,3 |
iMac Late 2015 21″ | iMac16,x | iMac18,2 |
Mac mini Late 2014 | Macmini7,x | MacMini8,1 | NO | N/A |
Mac Pro Late 2013 | MacPro6,x | MacPro7,1 | NO | N/A |
※ 最後にOpenCoreを再度ビルドした上でインストールし、OSを再起動します。Universal Controlの有効化は、「Universal Controlの有効化」セクションで解説しています。
macOS Montereyにおけるスプーフィング
▼ まずはOpenCore Legacy Patcherをダウンロードし、実行します。
メインメニューが表示されたら「Settings」をクリックします。
※ 本稿ではOpenCore Legacy Patcher 0.6.6を使用しています。0.6.5以前のバージョンではUIが異なります。詳しくはこちら
SMBIOSタブに移動し、「Allow spoofing native Macs」を有効にし、SMBIOS Spoof LevelをModerateに設定します。SMBIOS Spoof Modelは、下記の表で自分のネイティブモデルに隣接するスプーフィングモデルに設定します。
▼ 画面が切り替わったら「SMBIOS」タブをクリックし移動します。
▼ 「Allow spoofing native Macs」の下にあるチェックボックスをクリックして有効にします。
▼ 「SMBIOS Spoof Level」の下にあるプルダウンメニューをクリックします。
▼ そして「SMBIOS Spoof Level」を「Moderate」に設定します。
▼ 「SMBIOS Spoof Model」とある下のセレクトボックスをクリックします。
▼ 「SMBIOS Spoof Model」を下記の表で自分のネイティブモデルを探し、その隣にある「Spoof SMBIOS」列にあるSMBIOSを選択します。
例) MacPro6,1を使用してる場合には、MacPro7,1を選択します。
▼ ここまでの設定が完了したら「Return」をクリックし、メインメニューに戻ります。
※ macOS Montereyに対応しているMacの場合には「App」タブに進み、「Allow native models」を有効にします。(macOS Monrereyに非対応のMacでは有効にしないでください。)
スプーフィングモデル
スプーフィングモデルの表には、Universal Controlをサポートする直近のMacが選ばれています。これらのモデルへスプーフィングを行うと、通常問題なく動作します。
モデル名 | Native SMBIOS (元の機種 ID) | Spoof SMBIOS (変更後) | Tested | Tested by |
---|
MacBook Air Early 2015 11″ / 13″ | MacBookAir7,x | MacBookAir8,1 | YES | Hzlph |
MacBook Pro Early 2015 13″ | MacBookPro12,x | MacBookPro13,1 |
MacBook Pro Mid 2015 15″ | MacBookPro11,4 / 11,5 | MacBookPro13,3 |
iMac Late 2015 21″ | iMac16,x | iMac18,2 |
Mac mini Late 2014 | Macmini7,x | MacMini8,1 | NO | N/A |
Mac Pro Late 2013 | MacPro6,x | MacPro7,1 | YES | Crystall1nedev |
※ 最後にOpenCoreを再度ビルドした上でインストールし、OSを再起動します。Universal Controlの有効化は、「Universal Controlの有効化」セクションで解説しています。
ここまでの作業、お疲れさまでした。
次のページでは、この設定を反映させるため、OpenCoreのビルドとインストールを行う方法とユニバーサルコントロールの設定方法などを見ていきます。
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