古いMacで最新のmacOS を利用可能にするOpenCore Legacy Patcherのプロジェクトリーダを務めるミコラ・グリマリョク (Mykola Grymalyuk)氏はMacのカスタマイズやサポート対象外のMacにmacOS Catalina をインストール可能にするmacOS Catalina Patcherの開発者と知られるdosdude1氏からApple Developer Transition Kit (開発者移行キット: DTK)を受け取ったことを自身のX (旧Twitter)で明らかにしました。
目次
- ミコラ氏が受け取ったApple Developer Transition Kit とは? Mac miniの形をしたiPad?
- OCLPの開発に活かされるのか?
- 付録: Mac mini (M1, 2020) / DTKの主な違い
ミコラ氏が受け取ったApple Developer Transition Kit とは? Mac miniの形をしたiPad?
DTKはIntel プロセッサからApple Siliconへ移行にあたり、開発者に有償で貸し出されたテスト機で、筐体やポートの配置こそM1を搭載したMac miniと共通ですが、SoCにはiPad Pro 11-inch (第2世代)及びiPad Pro 12.9-inch (第4世代)に搭載された「Apple A12Z Bionic」が使用され、Apple M1を搭載したMac mini (M1, 2020)と異なりThunderbolt 3/USB 4がサポートしない等、違いもありました。
また、Hypervisor.frameworkが利用できないため、仮想マシンなどの実行は出来ないとされています。
さらに、SoCそのものはiPadと同じであるものの、iPad Proに搭載されているApple A12Z Bionicと比較してクロックが4%ほど低いため、DTKでのベンチマークはiPad Proより低くなるという報告もあがっています。
OCLPの開発に活かされるのか?
これについてミコラ氏は受け取ったDTKの写真とともに、以下のように記しました。
Got a little present from @dosdude1
today, an Apple Silicon Developer Transition kit!
This will be a fun little research project 🛠️今日は @dosdude1 からちょっとしたプレゼントをもらいました。
ミコラ氏のXより (抄訳はKabocyによるもの)
Apple Silicon Developer Transition Kitです!
これは楽しい小さな研究プロジェクトになりそうです 🛠️
楽しい小さな研究プロジェクト」について、これがOpenCore Legacy Patcherを指している訳ではないと思われますが、5月にはOCLPのARMのサポートを伺わせるコミットが続いたこともあったことから、全く関連がないわけではないかもしれません。
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これについて、OpenCore Legacy PatcherのエバンジェリストでもあるMr. Macintosh氏は、ミコラ氏の同投稿を引用しながら、以下のようにミコラ氏がApple Silicon Developer Transition Kit(DTK)を受け取ったことに対する歓迎と軽いジョークを交えた投稿を行いました。
YES!!!!!! Welcome to the DTK club 🤩
My response when @khronokernel
told me?
“OCLP on DTK eta wen?” Haha jk😅やったぁ!!!!!! DTKクラブへようこそ 🤩
Mr. Macintosh氏のXより (抄訳はKabocyによるもの)
@khronokernel が教えてくれたときの私の反応は?
『DTKでOCLPが動くのはいつ?』なんてね(笑)😅
※(投稿内の「eta」は「estimated time of arrival」の略で「いつごろ完成?」の意味)
概ねジョークであるため、ミコラ氏と親しい間柄で軽い冗談を飛ばしていること以外にあまり読み取れる内容はありませんが、総じてOCLPのプロジェクトリーダである立場からこの提供がOCLPの開発に活かされることを期待されていることの裏付けになっています。
なお、現在ミコラ氏をはじめとするOpenCore Legacy Patcherの開発チームは今秋Appleから公開される予定のmacOS Sequoiaのサポートに向け開発が進められています。
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OCLPのよるApple Silicon (ARM)のサポートについてはOpenCore Legacy Patcherだけでなく、OCLPのバックボーンであるOpenCorePkgのARMサポートが必須であることから開発には従来の比ではない作業が必要になることが予想されます。しかし、OpenCorePkgの開発にはミコラ氏も名を連ねていることから、何らかの進展が期待されます。
付録: Mac mini (M1, 2020) / DTKの主な違い
DTK | Mac mini (M1, 2020) | |
---|---|---|
機種 ID | ADP3,2 ADP3,1 | Macmini9,1 |
モデル番号 | A2330 | A2348 |
部品番号 | MYAL2LL/A | MGNR3xx/A MGNT3xx/A |
SoC | Apple A12Z Bionic | Apple M1 |
ストレージ | 512GB | 256GB 512 GB 1 TB 2 TB |
RAM | 16GB (ADP3,2の場合) | 8GB 16 GB |
接続と拡張性 | USB-C, (10 Gbps, DisplayPort-capable) x 2 USB-A ports (5 Gbps) x 2 HDMI 2.0 port ギガビットEthernetポート 3.5mmヘッドフォンジャック | USB-C (Thunderbolt / USB 4) x 2 USB-Aポート (最大5Gb/s) x 2 HDMI 2.0 ポート ギガビットEthernetポート (10Gb Ethernetに変更可能) 3.5mmヘッドフォンジャック |
通信機能 | Wi-Fi Dual-band IEEE 802.11a/b/g/n/acに対応 Bluetooth Bluetooth 5.0 | Wi-Fi 802.11ax Wi-Fi 6 IEEE 802.11a/b/g/n/acに対応 Bluetooth Bluetooth 5.0 |