Apple、EU向けにiOS、Safari、App Storeの大幅な変更を発表 – デジタル市場法(DMA)への対応とその影響

ニュース

Apple、EU向けにiOS、Safari、App Storeの大幅な変更を発表 – デジタル市場法(DMA)への対応とその影響

米Appleは1月25日 (現地時間)、EUでのサイドローディングをiOS 17.4で追加することを発表しました。App Storeに関する一連の変更は、欧州連合(EU)内でのデジタル市場法(DMA)への準拠を目的としています。

これらの変更は、開発者に新しいアプリ配布オプションと支払い処理オプションを提供するだけでなく、ユーザに新たな制御機能と開示事項を導入し、プライバシーとセキュリティのリスクを軽減することを目指しています。

European Parliament より

ユーザ向けの変更点

AppleはEUのデジタル市場法(DMA)の反トラスト法に関連した変更をiOS 17.4から行うことを変更しました。この変更により、iOSデバイスでApp Store以外のアプリストアが利用できるようになる他、Apple以外の決済サービスプロバイダ (PSP)を利用できるようになります。

ただし、Appleはこれがユーザにとっての新たな脅威になる可能性を指摘し、ユーザはアプリの内容や機能についてダウンロード前に確認できる「アプリインストールシート」でデベロッパ名やスクリーンショットなどの重要な情報を確認できるようになる機能を追加すると発表しました。

この「アプリインストールシート」はApple公証サービスを利用して開発者が行った申請の内容を基にした情報が表示されます。

開発者向けの変更点

開発者に対しては新しいAPIやサードパーティによる決済処理などの変更が追加されました。

  • 新しいAPIとツール
    • 600以上の新しいAPIが導入され、アプリ分析の拡張や、WebKit以外のブラウザエンジンの使用など、新たな機能が提供されます。
  • アプリの代替配布方法
    • 開発者は、AppleのApp Store以外のマーケットプレイスからiOSアプリを配布する新しいオプションを利用できるようになります。これには、専用のマーケットプレイスアプリから他の開発者のアプリをインストールおよび管理するための新しいフレームワークとAPIが含まれます。
  • 支払い処理の選択肢
    • デジタル商品やサービスの支払い処理において、開発者はより柔軟性を持って選択できるようになります。

この中で、iOS向けのブラウザでWebKitのブラウザエンジンが利用できるようになるなど、これまで開発上の制約も緩和されました。

サイドローディングがもたらす懸念点と今後

Appleのこの動きは、DMAの要件に準拠することにより、EU内での競争を促進し、消費者の選択肢を広げることを目指しています。しかし、これらの変更は、新たなマルウェア、不正行為や詐欺、違法有害コンテンツ、そしてその他のプライバシーおよびセキュリティ上の脅威に晒される可能性があります。
このため同社はAppleはリスクを軽減するための保護措置を導入しています。

ただし、Appleはこれらの対策を講じてもなお、リスクが完全に排除されるものではないとし、これまでのAppleの取り組みがユーザ保護とユーザ体験にとって重要であったことを暗示しました。

また、WebKit以外のブラウザエンジンの使用がシステムパフォーマンスやバッテリー寿命に与える影響についても懸念を示しました。

このほか、Appleは同プレスリリース内でインフォグラフィックを公開し、新しいEUアプリのビジネス条件に基づいて、開発者の費用負担を紹介しました。

この中で、開発者の99%がAppleに支払う手数料を削減するか、または現状維持になるとされています。一方で、開発者のわずか1%未満が新しく導入された「コアテクノロジーフィー」を支払うことになると見積もられています。

EUの開発者にとって新しいビジネス条件がもたらすメリットを強調し、ほとんどのデベロッパーが手数料の削減されるか据え置きになる一方、ごく一部のデベロッパーはコアテクノロジーフィーによって追加コストが発生する可能性があることを示しました。

iOSデバイスのサイドローディングが与える日本国内への影響

今回の変更はEUの27カ国で利用するユーザが対象となっており、それ以外の国や地域ではサイドローディングは利用できません。

しかし、日本も流れに追随してサイドローディング義務化の動きが顕著になっています。日本政府としては公正な競争を重視する政策の一環として進められており内閣官房デジタル市場競争会議 (DMCH)がサイドローディングに関する政策をまとめています。

2024年には法案化が予定されており、日本国内でもサイドローディングが有効になる可能性が高まっています。
世界にアプリを展開する国内の企業にとっては、EU市場へのアプローチを再考し、EUでの新しい規制環境に適応するための戦略を立てる良い機会になる他、国内でサイドローディングが有効になった際、いち早く恩恵を受けられるはずです。

ただしユーザにとっては、この変更が思わぬトラブルを引き起こす原因となる可能性があるだけに、EUでの変更がユーザにとってどのような変化を与えるのかを注視する必要があるかもしれません。

まとめ

Appleの発表は、デジタル市場の将来に対する同社のビジョンと、EUの規制に対する積極的な対応を示しています。

このAppleの発表は今年3月に迫るEUの規制に対応したもので、開発者とユーザーに新たな課題をもたらす可能性がありますが、より競争的で革新的なデジタル市場の実現に向けた一歩と言えるでしょう。

このプレスリリースの中でAppleは「but don’t eliminate」や「Even with these safeguards in place, many risks remain.」といった否定的な表現も含まれており、サイドローディングの導入に対する複雑な心境が垣間見えます。

※ (日本語版のプレスリリースでは「ただし、それによってリスクが完全に排除されるものではありません。」、「これらのセーフガード措置を実施してもなお、多くのリスクが残ります。」という表現)

Appleにとっても難しい1年になりそうです。