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OpenAIのサム・アルトマンCEOの解任で揺れるAI界 ―時系列で見るCEO退任とその余波

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OpenAIのサム・アルトマンCEOの解任で揺れるAI界 ―時系列で見るCEO退任とその余波

ChatGPTを世に送り出し、急成長を遂げたOpenAI。
このOpenAIの取締役会が同社の創設者の一人で最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン(Sam Altman)氏を突如解任し、業界に衝撃が走っています。
この記事ではOpenAIによるアルトマン氏の解任について時系列とともに詳細をまとめました。

2023年11月20日 10時26分 (日本時間)更新

2023年11月17日 深夜: CEO解任の発表

現地時間2023年11月17日、OpenAIはアルトマン氏のCEO解任と解雇を発表し、同社の最高技術責任者であるミラ・ムラティ(Mira Murati)氏を暫定CEOにすることを発表しました。

OpenAIはこの発表の中で、アルトマン氏の解任について「取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直さを欠き、取締役会の責任遂行を妨げたとの結論に至った」とした上で、「取締役会は、同氏が引き続きOpenAIを率いる能力をもはや信頼していない」と発表し、アルトマン氏に一方的な問題があったとしました。

この解任は電撃的なもので、OpenAIは11月6日(現地時間)、同社初の開発者イベント「OpenAI DevDay」を開催しサム・アルトマンCEO(当時)はカスタマイズできるChatGPTの「GPTs」を始めChatGPTに搭載する新機能やOpenAIのあり方を発表したばかりでした。

開発者イベント「OpenAI DevDay」でGPTsを紹介するアルトマン氏

サム・アルトマン氏のOpenAI CEO解任は社内で共有されていた訳ではないらしく、OpenAIの従業員はアルトマン氏のCEO解任について解任が公表されたタイミングで知ったとされています。

アルトマン氏のCEO解任と共に、同社の共同創設者で取締役会長のグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏も取締役解任、社長として留任させることが決定されました。

この発表にMicrosoftの会長兼、CEOのサティア ナデラ氏も声明を発表しました。

2023年11月18日: OpenAI社長の辞任、上級研究員も続く

アルトマン氏のCEO解任されたという発表があった数時間後、社長として留任することになったブロックマン氏がOpenAI社長を辞任したとX(旧Twitter)で発表。

ブロックマン氏は別の投稿で「サムと私は、今日の取締役会の行動にショックを受け、悲しんでいます」と投稿し、「Google Meet」で処遇について言い渡されたと明かしました。

一連の動きに、OpenAIの上級研究員などのメンバーも続き、研究部長のヤクブ・パチョッキ(Jakub Pachocki)氏、準備部長のアレクサンダー・マドリー(Aleksander Madry)氏、上級研究員のシモン・シドール(Szymon Sidor)氏の3人もOpenAIから退職しました。

11月18日: ライトキャップ氏による説明

OpenAIの最高執行責任者(COO)であるブラッド・ライトキャップ(Brad Lightcap)氏は内部メモで、アルトマン氏の解任が経営陣にとって驚きであり、彼らはこの決定の理由とプロセスをよりよく理解しようと取締役会と複数回話し合っていることを明らかにしました。ライトキャップ氏は、この決定は不正行為や会社の財務、ビジネス、安全性、セキュリティ/プライバシーの慣行に関連しているわけではないと述べました​

開発者イベント「OpenAI DevDay」でのアルトマン氏

11月18日: アルトマン氏の次の一手

OpenAIのCEOの座を解任させられたアルトマン氏は投資家らに対し、新たな人工知能ベンチャーを立ち上げる計画があると語っていたとThe Informationが報じており、期待が集まりました。

これには、アルトマン氏と共に取締役会長を解任させられ、OpenAIの社長を辞任したブロックマンも協力するとの見方が広がっており、プロジェクトの詳細は不明なものの、AIチップ関連のスタートアップではないかと囁かれていました。

11月18日: スタッフのクーデター

OpenAIの従業員は18日 17時までに取締役全員が辞任し、アルトマン氏とブロックマン氏をOpenAIに戻さなければ、OpenAIに勤める多くの従業員が辞職すると迫ったとしています。

これに対し、取締役会は概ね同意し、アルトマン氏との交渉を開始したものの、突然解雇を言い渡されたアルトマン氏側は困惑しており、取締役全員が辞任するという期限も過ぎてしまいました。

TheVergeは「もしアルトマンが会社を辞めて新しい会社を立ち上げることに決めたら、それらのスタッフは間違いなく彼に同行するだろう。」としており、OpenAIに携わる有力な技術者の流出が懸念されています。

ただし、新しいCEOとしてミラ氏が適任であるとするOpenAIの社員もいます。

2023年11月19日: Xでハート合戦、立場表明か

アルトマン氏は19日、自信のX(旧Twitter)を更新。その中で「私は OpenAI チームをとても愛しています。(i love the openai team so much)」と投稿し、これにOpenAIの従業員が一斉にハートの絵文字を付けてリポスト(旧リツイート)を始めました。

TheVergeが報じたところによると、これらが意味することはアルトマン氏が新しい会社を設立した場合、誰がアルトマン氏に賛同し、新しい会社に移るのかを取締役会に知らせる意図があったとしています。

「非常に多くの人々がグレッグ(現在は辞任したブロックマン氏)とサム(アルトマン氏)のおかげで今の場所がある」とTheVergeの情報筋は語ったと報じています。

【更新】2023年11月19日 夜: アルトマン氏、OpenAI本社へ

11月19日 21時にアルトマン氏はOpenAIのゲストパスを首に下げ、不服そうな顔の写真を自身のX(旧Twitter)にアップしました。同氏はOpenAIの本社へ出向き、交渉を行っているものとみられます。

このツイートの中でアルトマン氏は「これを着るのは最初で最後(first and last time i ever wear one of these)」としており、これ以上この事態を長期化されるつもりはないことを示唆しました。

BloombergはMicrosoftのサティア・ナデラ氏が、アルトマン氏、OpenAI元社長グレッグ・ブロックマン氏、そして現取締役4名による新しい取締役の選出を目指す話し合いの仲介を行っていると報じられており、OpenAIに巨額の投資を行いパートナーシップを結ぶMicrosoftとしても早期の解決を望んでいるものとみられます。

ブロックマン氏が明かす電撃解任の詳細

一連OpenAIによるアルトマン氏やブロックマン氏の処遇について、ブロックマン氏はX(旧Twitter)上で詳細を明らかにしました。

ブロックマン氏のツイートによると、アルトマン氏はイリヤ・スツケヴェル(Ilya Sutskever)氏から11月16日にテキストメッセージを受け取り、翌日である金曜日の正午に話し合いを求められたといいます。

アルトマン氏はGoogle Meetに参加し、ブロックマン氏を除く全ての取締役会メンバーが出席していました。この会議でイリヤ氏はアルトマン氏に解任を告げ、ニュースが間もなく公表されると伝えました。

その後、ブロックマン氏もイリヤ氏から連絡を受け、Google Meet上でブロックマン氏も取締役会から外されることを知らされました。ただし、会社にとって重要な役割は維持されるとの話を受けたと説明しています。
ブロックマン氏はこのタイミングでアルトマン氏は解雇されたと告げられたそうで、同じ頃、OpenAI はブログ投稿を公開したいいます。

ブロックマン氏によると、暫定CEOに就任したミラ氏は前日(16日)の夜に知らされていたものの、ミラ氏以外の経営陣はOpenAIの発表の後気づいたとのことです。

Microsoftの立場

MicrosoftはOpenAIに対し100億ドルの投資をし49%の株式を保有しているとも報じられていますが、Axiosが報じたところでは、この具体的な経営決定については事前に詳細を伝えられておらず、好評の数分前に知らされたとしています。

11月17日のOpenAIの発表を受け、Microsoftの企業ブログが更新され、Microsoftの会長兼、CEO のサティア ナデラ(Satya Nadella)氏が同日、声明を発表しました。
その中で、「我々はOpenAIと長期契約を結んでおり、イノベーションの課題および魅力的な製品ロードマップを実現するために必要なすべてのものにアクセスできます。」とし、この経営決定がMicrosoftが提供する製品や開発に影響はないことをアピールした上で、「そしてミラ*1とチームに今後も尽力していきます。」と発表し、OpenAIとの連携を強調しました。

※1 ミラ氏は「ミラ・ムラティ氏」のこと。アルトマン氏の後任で暫定CEO。

ただし、SEMAFORによるとMicrosoftのCEOであるナデラ氏は「OpenAIの取締役らがアルトマン氏の解任に対する対応を誤ったため、その措置が同社の主要パートナーの不安定化を招いたと考えているという」と指摘し、OpenAIの対応について不満を持っているとしました。

「OpenAI DevDay」でサプライズ ゲストとして登壇したナデラ氏

ナデラ氏は11月6日に行われた「OpenAI DevDay」にサプライズ ゲストとして登壇しており、アルトマン氏に対して「皆さんは魔法のものを構築しました」と称賛していました。
「魔法のものを構築」したOpenAIを率いていたCEOの電撃解任し、説明もなくミラ氏をCEOにするOpenAIのガバナンスに不信を覚えても不思議ではありません。

事実、Bloombergはナデラ氏はアルトマン氏の解任を公表直前に知らされたことに対し激怒していたと報じています。

まとめ

ここまでアルトマン氏のCEO解任について詳細をまとめました。
この電撃解任の中にはアルトマン氏の他、同社の共同創設者で取締役会長のブロックマン氏も降格され、翌日同社を去りました。

この一連の解任劇ではOpenAIの共同創設者で主任科学者のイリヤ・スツケヴェル氏が関与しており、両者の方向性の違いが浮き彫りとなった格好です。

Microsoftは現在OpenAIとのパートナーシップでMicrosoft Copilotを始めAI関連サービスで急速に力を取り戻しています。この騒動でもMicrosoftは安定したサービスと開発を続けることをアピールしていますが、OpenAIへの出資やパートナーシップの見直しは必至でアルトマン氏とブロックマン氏の進退も含め今後の動きに注目が集まります。