これまで「あのかぼ」ではOpenCore Legacy Patcher (OCLP)の使い方やTipsを紹介してきました。
このページでは「OpenCore Legacy Patcherとは何か?」というテーマに、さらにこのツールの魅力と本質に迫ります。
OCLPを使ったことの無い方はもちろん、普段からOCLPを利用している方も、OCLPがどのようにして愛用のMacに最新のmacOSを動作させているのか確認してみることで、さらにMacやOCLPを好きになるかもしれません。
目次
- OpenCore Legacy Patcherとは?
- OpenCore Legacy Patcherを支える技術
- 古いMacを有効活用する手助けに
- OpenCore Legacy Patcherに関するよくある質問
OpenCore Legacy Patcherとは?
OpenCore Legacy Patcher (OCLP)は、ミコラ・グリマリョク氏を中心とするPythonベースのプロジェクトで、特にAcidantheraのOpenCorePkgとLiluを中心に構築されています。
OCLPは、Appleによってサポートがされなくなった古いMacにmacOS Big Sur以降のmacOS VenturaやmacOS Sonomaなどの最新のmacOSをインストールを可能にします。
ここではOpenCore Legacy Patcherについてさらに詳しく見ていきます。

OpenCore Legacy Patcherの特徴
OCLPの特徴①: セキュリティを念頭に置いて構築
OpenCore Legacy Patcherはシステム整合性保護 (SIP)やFileVault 2、.im4m セキュア ブート、およびVaultingをサポート。
サポートされている Mac並みのセキュリティを実現します。
OCLPの特徴②: ネイティブ OTA アップデートに対応!
OTA アップデート、つまりmacOSのアップデートが公開されたら「システム環境設定」や「システム設定」を利用してすぐにインストールすることが可能です。
12GBを超えるInstallAssistantsをダウンロードすることなくシームレスにmacOSをアップデートすることができます。
(ただし、ソフトアップデートから提供される「macOS Security Response」には注意が必要かもしれません。)
OCLPの特徴③: ファームウェアの改変不要!
さらにOpenCore ブートマネージャの機能を活用することで、プロトコルのアップグレードはメモリ内で行われます。
その為、例えばファームウェアがAPFSをサポートしていなくとも、ROMを改変することなく最新の機能を利用できます。
OCLPの特徴④: より多くのハードウェアをサポート
OCLPはMacに搭載されている「古いハードウェア」のサポートも追加します。
OpenCore Legacy Patcherのルートパッチをインストールすることで、最新のmacOSではサポートされなくなってしまったグラフィック カードやWi-Fi、Bluetoothなどのワイヤレス モジュールが再び利用できるようになります。
これにより多くのユーザはMacを改造することなく、最新のmacOSで古いMacを有効活用できます。
もちろん、GPUの換装やSSDへの換装などのカスタマイズした場合でも、ハードウェア アクセラレーションが利用でき、AirDrop、Apple Watch ロック解除、Sidecarなどの新しい機能を利用できる場合があります。
OCLPの特徴⑤: 最新の機能が利用可能に!
OpenCore Legacy Patcherは「サポートを失った古いMac」だけでなく、最新のmacOSをサポートしているMacにも利用できます。
例えば、Mac mini (Late 2014): Macmini7,1はmacOS Montereyを公式にサポートしていますが、macOS Montereyに追加されたユニバーサル コントロールなどの機能を利用できません。
OpenCore Legacy Patcherのスプーフィングを利用すればAppleによって制限を掛けられているSidecarやMac への AirPlay、Night Shift、およびユニバーサル コントロールのロックを解除します。
この他にもMetal APIが利用できないGPU、いわゆる「非Metal GPU」を搭載したMacにグラフィック アクセラレーションを実現したり、純正ではないストレージにもSATA および NVMe 電源管理を有効にできたりと見どころ満載なツールです。
対応しているモデル

OpenCore Legacy Patcherをサポートしているモデルは以下の通りです。
シリーズ名 | モデル名 | 機種ID |
---|---|---|
MacBook | MacBook (Early 2008以降) | MacBook5,x ~ |
MacBook Air | MacBook Air (Late 2008以降) | MacBookAir2,1 ~ |
MacBook Pro | MacBook Pro (Early 2008以降) | MacBookPro4,1 ~ |
Mac mini | Mac mini (Early 2009以降) | Macmini3,1 ~ |
iMac | iMac (Mid 2007以降) | iMac7,1 ~ |
Mac Pro | Mac Pro (Early 2008以降) | MacPro3,1 ~ |
Xserve | Xserve (Early 2008以降) | Xserve2,1 ~ |
iMac (Mid 2007)でOCLPを使用する場合にはIntel SSE4.1をサポートしたCPUに換装する必要があります。
この他、初代のMac ProでOCLPを使用できません。これはOpenCoreが64bit EFIアプリケーションであるためで、CPUが64bitに対応していてもEFI(ファームウェア)が32bitベースの場合には動作できません。
他のプロジェクトとの違い
OpenCore Legacy Patcher以外にもAppleからのサポートを失った古いMacに最新のmacOSをインストールするプロジェクトはありますが、なぜOpenCore Legacy Patcherを選ぶのでしょうか?
以下はOpenCore Legacy PatcherとPatched Surの比較です。
OCLP | Patched Sur | |
---|---|---|
OTAアップデート | 対応 | 非対応 |
FileVault | 対応 | 非対応 |
System Integrity Protection | 対応 | 非対応 |
ファームウェアへのパッチ | 不要 | 必要 (APFS Patchなど) |
開発のステータス | 開発中 | 開発終了 |
サポートしているOS | Mac OS X 10.7 ~ macOS 14 | macOS 10.15 ~ macOS 11 |
APFSスナップショット | 対応 | 非対応 |
非Metal GPUのサポート | あり | なし |
Sidecarのサポート | あり | なし |
OCLPはサポートされないmacOSをインストール可能にする「だけ」でなく、macOS に搭載された各種機能を利用できるようにし、さらに古いハードウェアのサポートを追加し、快適に利用できる手助けをしてくれます。
開発も活発に行われており、OpenCore Legacy Patcherは日々進化しています。
※ macOS CatalinaをサポートしていないMacにmacOS Catalinaをインストールする場合には「macOS Catalina Patcher」をご利用ください。
OCLPを利用するメリット
OCLPを使用する最大のメリットはセキュリティを最大限保ちつつ、最新のmacOSをインストールすることができる点です。
また他のプロジェクトでは難しかった古いハードウェアのサポートやファームウェアを改変することなく利用できるため、多くのモデルで簡単に利用することができます。
特にセキュリティ面を重視した設計になっており、他のプロジェクトを利用するよりも安全にMacが利用できます。
例えば、最近ではOCLPにAMFIやライブラリの検証を無効にせずに、サポート対象外のMacで最新のmacOSを使用できるようにする機能、「AMFIPass」という機能が追加されました。
当初からSIPやFileVaultを対応しているなど、セキュリティ面での強みを持っていたOCLPは、これらの機能に加えて「AMFIPass」を導入することで、セキュリティ面での強固な姿勢をさらに強化しました。
このようにOCLPは、ユーザに最新のmacOSをインストールできるようにするだけでなく、セキュリティ面にも「こだわり」があり、少しでも安心して利用できようにと開発が続けられています。
OCLPを利用するデメリット
OCLPを利用すること自体のデメリットはあまり多くありませんが、macOS Monterey以降をインストールする場合にはMacにそれなりのスペックが求められます。
さらにmacOS Ventura 以降ではUSB 1.1のサポートが終了しました。それにより内部的にUSB 1.1を使用しているMacではインストール時にはUSBマウスやキーボードが必要になりました。(インストール後はOCLPのルートパッチをインストールすることで解決します。)
このように、「OCLPのデメリット」とはやや異なりますが、場合によってはMacを快適に利用できない可能性があります。
この場合にはUbuntuやChrome OS Flexなどを試してみても良いかもしれません。
OpenCore Legacy Patcherを支える技術
OpenCore Legacy Patcherは基本的にconfig.plistファイルを編集したり、Macのモデルを特定し、必要なファイルを準備したりするためのツールで、ブートプロセスに関してはあまりロジックを持っていません。では、このOpenCore Legacy Patcherはどのようにして、サポート対象外のMacに最新のmacOSをインストールしたり、古いハードウェアのサポートを追加するのでしょうか?
OCLPは前述の通り、大半の処理をOpenCorePkgとLiluを利用して古いMacに最新のmacOSをインストールして快適に動作するようにしています。ここではOpenCorePkgとLiluに焦点を当てて、OpenCore Legacy Patcherを見てみたいと思います。
OpenCore Legacy PatcherとOpenCorePkg
OpenCore Legacy Patcherで欠かせないのはOpenCorePkg (OpenCore Bootloader)。
OpenCorePkgは、OpenCoreブートローダーとその開発SDKを含むプロジェクトで、主にApple特有のUEFIドライバーの補完機能を提供することを目的としています。
OpenCorePkgの主な特徴や機能は以下の通りです。
- Appleディスクイメージの読み込みサポート
- Appleキーボード入力の集約
- Apple PEイメージ署名の検証
- Apple UEFIセキュアブート補完コード
- スクリーン読取りサポートを含むオーディオ管理
- 基本的なACPIおよびSMBIOSの操作
- タイマーサポートを含むCPU情報の収集
- 暗号プリミティブ(SHA-256、RSAなど)
- 解凍プリミティブ(zlib、lzss、lzvnなど)
- ACPI読取りおよび変更のためのヘルパーコード
- ファイル、文字列、UEFI変数の高レベル抽象化
- オーバーフローチェック算術
- UEFIセキュアブートの競合なしでのPEイメージの読み込み
- Plist設定フォーマットの解析
- PNG画像の操作
- テキスト出力およびグラフィックス出力の実装
- XNUカーネルドライバーのインジェクションおよびパッチエンジン
OpenCorePkgはAppleのディスクイメージの読み込み、キーボード入力の集約、PEイメージの署名検証、UEFIセキュアブートの補足コード、基本的なACPIおよびSMBIOSの操作、CPU情報の収集、SHA-256やRSAなどの暗号プリミティブもサポートしています。
さらに、OpenCorePkgは、OpenCoreのユーザ設定ファイルフォーマットに関する情報を提供し、macOSが起動する際の設定などを行います。
OpenCore Legacy PatcherのOpenCorePkgによる起動プロセスは、先日投稿した「OpenCore Legacy Patcherのブートプロセスを徹底解剖!―電源を投入してからログイン画面が表示されるまで。」にまとめましたので、OpenCorePkgがどのようにして古いMacで最新のmacOSを立ち上げるか気になる方は、ぜひご一読ください。
OpenCore Legacy PatcherとLilu
OpenCore Legacy PatcherはOpenCorePkgの他、「Lilu」も利用しています。
「Lilu」はmacOSのためのカーネルレベルのパッチエンジンです。LiluはmacOSの基本的な動作を変更することを可能にするため、MacではないPCでmacOSを動作させる「Hackintosh」でも利用されます。
Liluは、macOSのカーネル、すなわちシステムの中核部分にパッチを適用します。
カーネルレベルで動作するため、より深いシステム変更が可能でカバリーモードやmacOSインストーラでの動作も可能です。
特定のブートローダーに依存しない設計で、APIを通じたカーネルやシステム拡張へのアクセスできるため、今後他のプロジェクトや利用でも活躍が期待されます。
Liluも大変モダンな思想で開発されており、プラグインベースの設計を採用しています。
これにより様々な機能や修正を追加するためのプラグインをサポートします。
単独では特定の機能を持たないLiluは、プラグインによってその機能が拡張されます。
例えば、WhatEverGreenやAppleALC、AirportBrcmFixupといったプラグインは、それぞれGPUサポート、オーディオコーデックのパッチ、Wi-Fiモジュールのパッチといった特定の機能を提供します。
OpenCore Legacy PatcherはLiluを使用することで多くのハードウェアのサポートを追加し、より快適にmacOSを動作させることを可能にしています。
古いMacを有効活用する手助けに
個人的に「古いMac」という表現は好きではありませんが、OpenCore Legacy Patcherは愛用しているMacをもっと長く、最新の状態で活用したいという方には大変有用なプロジェクトです。
弊サイトと「おんかぼ!」では引き続きmacOS SonomaとOpenCore Legacy Patcherの最新情報をお届けします。
記事の更新については、かぼしーのTwitterアカウントやHumin.meで紹介しますので、ぜひフォローいただけると幸いです!
OpenCore Legacy Patcherに関するよくある質問
OpenCore Legacy Patcherの安全性は?
OpenCore Legacy Patcher (OCLP)はミコラ氏が主導するコミュニティベースのプロジェクトで、セキュリティに重きを置いたモダンな設計をしたツールです。
System Integrity Protection (SIP)、FileVault 2、.im4m Secure Bootをサポートしており、AppleがサポートしているMacと同様のセキュリティが提供されます。
OpenCore Legacy Patcherを使用するリスクや危険性はありませんか?
前述の通り、OpenCore Legacy Patcherはセキュリティを重視した設計になっており、他のプロジェクトと比較してOpenCore Legacy Patcherはよりセキュアに利用することが可能です。
一方でセキュリティ関連のフォーラムの「Security Stack Exchange」では、「OpenCoreは熱心に開発している評判の良い個人たちのグループですが、正式な監査が行われたことはないと思います。悪意のない単純なミスが含まれている場合でもデバイスを悪用されるリスクを高める可能性があります。」(前出のページから意訳)と指摘されています。
ただし、OpenCore Legacy Patcherのプロジェクトリーダーであるミコラ氏はカナダ西部のアルバータ州におけるサイバーセキュリティ関連のカンファレンス、「BSides Calgary」で登壇したり、セキュリティ関連についてよく取り組んでいます。
OpenCore Legacy Patcherの使い方は?
OpenCore Legacy Patcherの使い方や最新情報は「あのかぼ」や「おんかぼ!」で詳しく紹介しています。「あのかぼ」ではOCLPに関するガイドを中心としており、インストールに関連する注意点やTipsもまとめております。
その一例を紹介します。
- OpenCore Legacy Patcherを使用したmacOS Sonomaのインストールガイド
- OpenCore Legacy Patcherを使用したmacOS Big Sur~macOS Venturaのインストールガイド
- OpenCore Legacy Patcherのブートピッカーを非表示にする方法
- OpenCore Legacy Patcherを使用して非対応MacでもUniversal Controlを有効にする方法
おんかぼ!内のOpenCore Legacy Patcher関連の最新ニュース
「おんかぼ!」ではOpenCore Legacy Patcherの最新ニュースを取り扱っております。
OCLPを使用してmacOS Venturaをインストールすることは可能ですか?
はい。OpenCore Legacy Patcher (OCLP)を使用してmacOS Venturaをインストールすることは可能です。
OCLPを使用してmacOS Venturaをインストールするにはこちらのガイドをご利用ください。
OCLPを使用してmacOS Sonomaをインストールすることは可能ですか?
OpenCore Legacy Patcher (OCLP)でmacOS Sonoma 14をインストールすることは可能です。
一部のMacではインストール時にUSBハブとUSBマウス、キーボードが必要になる他、快適に動作させるためには8GB以上のメモリが必要になります。
macOS SonomaがサポートされないMacにOCLPを使用してインストールする方法についてはこちらのガイドで詳しく解説しています。
他の同様のプロジェクトとOpenCore Legacy Patcher (OCLP)の違いはなんですか?
Appleからのサポートを失った古いIntel Macの活用を目的としたプロジェクトはOpenCore Legacy Patcherの他にもPatched Surなどいくつかあります。
OpenCore Legacy Patcherとの大きな違いは「OTA アップデート」が使用できるか、「SIP」や「FileVault」などのセキュリティ関連機能のサポート、古いハードウェアの利用の可否が挙げられます。
OCLP | Patched Sur | |
---|---|---|
OTAアップデート | 対応 | 非対応 |
FileVault | 対応 | 非対応 |
System Integrity Protection | 対応 | 非対応 |
ファームウェアへのパッチ | 不要 | 必要 |
開発のステータス | 開発中 | 開発終了 |
サポートしているOS | Mac OS X 10.7 ~ macOS 14 | macOS 10.15 ~ macOS 11 |
非Metal GPUのサポート | あり | なし |
Sidecarのサポート | あり | なし |
Patched Surも素晴らしいプロジェクトでしたが、OCLPはセキュリティ面を重視した、よりモダンな設計になっています。
OCLPでUSBメモリを使用せずmacOS Sonomaにアップグレードすることは可能ですか?
技術的には可能です。予めMacにOpenCore Legacy Patcher (OCLP)をインストールし、Macの再起動後、インストールしたOpenCore から起動させることで「システム環境設定」の「ソフトウェアアップデート」からmacOS Sonomaへアップグレードすることができます。
ただし、この方法ではインストール時に予期せぬ不具合が発生する場合やUSB 1.1に依存したMacなどでは作業の途中からMacに内蔵されてたキーボードやトラックパッドなどが利用できなくなります。
USBメモリを使用しないmacOS Sonomaへのアップグレードの詳細は「【最新ガイド】macOS Sonoma非対応のMacをOCLPを使用してmacOS 14にアップグレードする方法」をご覧ください。
OpenCore Legacy PatcherがサポートしているOSは?
OpenCore Legacy Patcher (OCLP)がサポートしているOSは作業や利用の用途で異なります。
OCLP自体はMac OS X Lion 10.7 以降のOSをサポートしていますが、OCLPのアプリを立ち上げるにはOS X Yosemite 10.10以降が必要な他、macOS Ventura 以降のインストーラーを作成するには、OS X El Capitan 10.11 以降が必要です。
OCLPでインストールできるmacOS はmac OS Big Sur 11以降からmacOS Sonoma 14.xです。
▼ 2023年11月現在のOCLPのOSサポート状況
- maOS Big Sur 11 インストール可能
- maOS Monterey 12 インストール可能
- maOS Ventura 13 インストール可能
- maOS Sonoma 14 インストール可能 ※現在開発中
2023.11.16 コンテンツの強化、セクションの追加を行いました。