OpenCore Legacy Patcherの開発チームは、macOS Sonomaに対するサポートの早期プレビューをリリースしたことを発表しました。この早期プレビューは、PatcherSupportPkg 1.2.0の一部として公開されています。
目次
- PatcherSupportPkg 1.2.0のリリース
- Hackintoshについての言及も
- macOS Sonomaサポートはベータ段階
- OpenCore Legacy Patcher開発の展望
- コラム: BroadcomパッチをHacintoshで利用するには
- まとめ
PatcherSupportPkg 1.2.0のリリース
OpenCore Legacy Patcherのプロジェクトリーダー、Mykola Grymalyuk氏のTwitterが7月24日に更新され、OpenCore Legacy PatcherのWWDC23内で発表されたmacOS Sonoma へのサポートの早期プレビューをリリースしたと発表しました。
これは7月18日にMykola Grymalyuk氏より発表された3802ベースのGPUのサポートの他、その後の成果を含むもので、多数のMetal GPUのサポートの他、これまで利用できないとされていた一部の無線デバイスのサポートが追加されました。
Metal GPUのサポート
今回リリースされたパッチはMetal GPU を搭載したすべての Mac モデルをサポートするようになりました。
モデルと年 | SMBIOSモデル | ノート |
---|---|---|
2015 ~ 2017 MacBook | MacBook8,1~10,1 | |
2012 ~ 2017 MacBook Air | MacBookAir5,x~7,x | |
2012 ~ 2017 MacBook Pro | MacBookPro9,x~14,x | |
2012 – 2017 Mac mini | Macmini6,x – 7,x | |
2009 – 2018 iMac | iMac11,x~18,3 | 11,x – 12,x: Metal GPU が必要 |
2008 ~ 2017 マックプロ | MacPro3,1~6,1 | 3,1 – 5,1: メタル GPU が必要 |
2008 – 2009 エックスサーブ | Xserve2,1 – 3,1 | メタル GPU が必要 |
つまりおおよそ2012年以降のMacのような、Metal GPUが搭載されるMacではこのパッチが使える他、2011年以前のような非Metal MacでもMetal GPUに換装できるモデルでは、換装することでパッチを利用することが可能です。
▼ サポートされるMetal GPUの詳細
- 3802 および 31001 ベースの GPU に対するメタル グラフィックスのサポート
- Intel Bridge – Skylake
- AMD GCN 1 ~ 3 (AVX2.0 以前の CPU の Polaris および Vega)
- Nvidia Kepler
逆に、Metalを利用できないGPU、つまり非Metal GPUのMacに関してはこのパッチを利用することはできません。
Mykola Grymalyuk氏はGitHub上で、OpenGLレンダリングを再統合するのは難しいタスクであるため、公開バイナリが提供されるのは冬まで待つべきだとしています。
これは、MetalをサポートしないMacに対するサポートが提供される可能性を示唆しているものを思われますが、その詳細や確約については現時点では発表されていません。
ワイヤレスモジュールのサポート
- レガシーとモダンなワイヤレスモジュールのパッチ
- モダン:
- Broadcom BCM94350, BCM94360, BCM43602, BCM94331, BCM943224
- レガシー:
- Atheros 全モデル
- Broadcom BCM94322, BCM94328
- モダン:
2017年以前のMacに対して、レガシーとモダンのワイヤレスモジュールのパッチが提供されています。これには、特定のBroadcomとAtherosチップセットが含まれます。
「レガシー」に振り分けられているワイヤレスモジュールはmacOS Montereyで使用できなくなったBCM94328やBCM94322、Atherosの全てのモデルです。そのため、現在macOS Big Surで利用しているユーザの場合、macOS Sonomaを含むmacOS Monterey以降ではボリュームパッチの適用が必要になります。
Hackintoshについての言及も
今回の発表ではHackintoshコミュニティに対しての言及もありました。そこではHacintoshのマシンでのBroadcomパッチの使用方法について具体的な手順を紹介しています。
詳しくはコラムをご覧ください。
macOS Sonomaサポートはベータ段階
この発表ではmacOS Sonomaのサポートを提供することについて触れられたものですが、あくまでも現在は「早期サポート」です。つまり、ベータ段階であり予期せぬトラブルの発現、発生が想定されます。
macOS Sonoma自体も現在パブリックベータです。OSそのものにもバグがある可能性があるため、OpenCore Legacy Patcherを公開しているGitHub上では、秋の正式リリースを待つようにとしています。
同様に、OpenCore Legacy PatcherもQuickLook、Photos.app の編集などの一部のグラフィックの問題は、一部の GPU で不安定になる可能性があるとしており、macOS Sonomaのサポートが備えたOpenCore Legacy Patcherのリリースまでインストールをしないことを推奨しています。
Nightly Buildsの警告
以前紹介したように、ナイトリ―ビルド(Nightly Builds)は開発が進行中のものであり、基本的にはテストされていないため、安全性が保証されていません。
未テストのナイトリ―ビルドが原因でシステムが安定しなくなったり、重大な問題が発生したりする可能性があるため、主要なマシンでNightly Buildsを使用することは推奨されません。
また、Nightly Buildsを使用する前には、必ずCHANGELOGを参照してください。これにより、新しいビルドに何が含まれていて、それがシステムにどのような影響を及ぼすかを理解することが可能です。
またOpenCore Legacy Patcherの開発チームはナイトリ―ビルドの直接リンク(直リン)を共有したり、これらのビルドを再アップロードしたりすることは禁止しています。
同様に、バイナリの再アップロードや、他のサイトからバイナリをダウンロードしたりしなように呼び掛けています。
これは、信頼できないソースからのビルドがセキュリティ問題を引き起こす可能性があるためと説明しています。
OpenCore Legacy Patcher開発の展望
OpenCore Legacy Patcherの開発チームは、macOS Sonomaのサポートについての早期プレビューをリリースしたばかりですが、これはまだベータ版であり、開発は活発に進行中です。現時点では、一部の環境下でQuickLookやPhotos.appの編集などが不安定になる可能性があると報告されています。
また、開発チームは現在、主に内部開発のためにこのブランチを使用しており、macOS Sonomaの正式なサポートは秋にリリース予定のOpenCore Legacy Patcherのバージョンに含まれる予定です。
一方で、開発チームはOpenGLレンダリングの再統合は困難なタスクとしており、非Metal GPUを搭載したMacのサポートに関しては冬以降と予想されています。
開発チームは、OpenCollectiveへの寄付者に感謝の意を表明し、これらの寄付がSonomaの開発に大いに役立っていると述べています。これにより、開発チームは開発に必要なハードウェアを購入するための資金を確保することができます。
最終的に、OpenCore Legacy Patcherの目標は、Appleが公式にはサポートしていない古いMacでも最新のmacOSを実行できるようにすることです。
この目標に向けて、開発チームは引き続き作業を進めていくと予想されます。
コラム: BroadcomパッチをHacintoshで利用するには
BroadcomパッチをHackintoshなどの非標準のマシンで使用する際の手順を提供しています。
System Integrity Protectionの設定
System Integrity Protectionを0x803に設定する必要があります。
これは、csr-active-configを0x803 (具体的には03080000)に設定することで完了します。
csr-active-config | data | 03080000
この新しい変数が設定されるように、NVRAMをリセットするか、csr-active-configを削除します。
AMFIの無効化
AMFIを無効化するためには、boot-argsを0x80 (具体的にはamfi=0x80)に設定します。
boot-args | string | amfi=0x80
Secure Boot Modelの無効化
Secure Boot ModelをDisabledに設定します。
特定のkextsのブロック
com.apple.iokit.IOSkywalkFamilyのような特定のkexts (カーネル拡張)をブロックします。
com.apple.iokit.IOSkywalkFamily
(参考)
kextsの注入
IOSkywalk.kextやIO80211FamilyLegacy.kextのような特定のkextsをシステムに注入します。これらのkextsの中には、子要素としてAirPortBrcmNIC.kextを持つものもあり、これも注入する必要があります。
MinKernelの設定
MinKernelを23.0.0に設定して、パッチがmacOS Sonoma上でのみ適用されるようにします。
OpenCore-PatcherのPost-Installオプションとroot patchの実行
これらが挿入されると、OpenCore-Patcher のインストール後のオプションとルート パッチを実行できるようになります。マシンが上記のように正しく設定されていれば、ワイヤレスモジュールのサポートが復元されます。
まとめ
ここまでOpenCore Legacy PatcherによるmacOS Sonomaのサポートについて紹介しました。
現時点でmacOS Sonomaはパブリックベータであり、正式リリースの前にも関わらず早期サポートとはいえリリースするのは過去のmacOSのサポートよりも随分早いスピードだと思います。
macOS Venturaの際と同様に、非Metal GPUを搭載したMacに関してはサポートまでに時間が掛かる可能性が高いものの、macOS Sonomaの正式リリースとともに、macOS Sonomaがインストール出来たらとても嬉しいですね。
あのかぼでは引き続きmacOS SonomaとOpenCore Legacy Patcherの最新ニュースをお届けします。
また、OpenCore Legacy Patcher関連のニュースは筆者Twitterでも告知いたしますので、ぜひフォローいただけると嬉しいです!
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