これまでmacOS Venturaの対応機種から外れてしまったMacに、OpenCore Legacy Patcherを使用してインストールする方法についてみてきました。
この記事では、OpenCore Legacy Patcherを使用してmacOS Venturaをインストールした際に起きうる不具合や、その解決方法についてまとめました。
目次
インストール後のトラブル
インストールまではできたものの起動ができない
macOS Venturaのインストールは完了したものの、Macの起動時に下図のような進入禁止マークが表示される場合には内蔵ストレージのEFIにOpenCore がインストールされていないか、起動先が間違っている可能性があります。
▼ その際には、一度Macの電源を切ってoptionキー(altキー)を押しながら立ち上げ、Startup Managerを立ち上げます。
Startup Managerが開いたら「EFI Boot」(OpenCoreのアイコン)のラベルを選択し、Enterキーを押します。
▼ OpenCoreのブートピッカーが起動したらmacOS Venturaをインストールしたボリュームを選択し、起動します。
日本語入力ができない
この問題はCatalinaより日本語入力関連のJapaneseIM.appやFrameworkがAVX命令セットを利用しているために発生しています。つまりAVXをサポートしていないCPUを搭載しているすべてのMacで発生します。
これを解決するためには、Mojaveから特定のFrameworkやDynamic Library、JapaneseIM.appなどを移植する方法などがありますが、安定性に欠ける点や、アップデート毎に作業をし直さなければいけないなど運用には困難を極めます。
仕方ないので、Macの日本語入力プログラムは諦めて、Google 日本語入力(Mozc)のご利用をお勧めします。
導入方法はこちらの記事をご参照ください。
DockやFinderなどの色がおかしい
グラフィックアクセラレータに問題がある可能性があります。
macOS Mojave以降、システムのアニメーションの描画などにMetal APIを使用しているため、Metal非対応GPUでは描画に時間がかかるなど、快適に使用できない場合があります。
この問題はOpenCore Legacy Patcher に同梱されているルートパッチ(Legacy GPU Acceleration Patch)を当てることで改善が期待できます。
macOS Mojave以降、アニメーションの描画などにはMetal APIを使用しています。そのため、Metal非対応GPUでは描画に時間が掛かるなどして、快適に使用できない場合があります。
本質的にはmacOS Venturaに対応したMetalを利用できるGPUに換装することが望ましいですが、MacBookシリーズなどでは現実的ではありません。
幸いなことにOpenCore Legacy Patcher に同梱されているルートパッチ(Legacy GPU Acceleration Patch)を当てることで改善が期待できます。
なお、OpenCore Legacy Patcheのボリュームパッチのインストール方法は是非こちらをご覧ください。
ただし、執筆時点(2022年10月29日)では残念ながら非Metal環境向けのパッチは完成しておらず、Metal GPUに換装するしかこの問題を解決できません。
Wi-Fiが利用できない
macOS Monterey以降、BCM94328などの複数のハードウェアのサポートがなくなりました。
macOS MontereyからWi-Fiが利用できなくなったMacのリスト
この影響を受けるであろう、Macのリストは下記のとおりです。
- iMac (Mid 2011): iMac12,x 以前
- Mac mini (Late 2009): Macmini3,1 以前
- Mac Pro (Mid 2010): MacPro5,1 以前
- Mac Pro Server (Mid 2010): MacPro5,1 以前
- MacBook (Early 2009): MacBook5,2 以前
- MacBook Air (Mid 2009): MacBookAir2,1 以前
- MacBook Pro (13-inch, Mid 2010): MacBookPro7,1 以前
Bluetoothが利用できない
Bluetoothが利用できない理由には大きく2つあります。
1つは「OS的な問題」、もう一つは「ハードウェア的な問題」です。
OS的な問題
macOS Monterey以降、macOS Big Surまで組み込まれたファームウェアが削除されました。
それにより、BRCM2070などが搭載されていたMacはBluetoothが利用できなくなりました。
macOS MontereyからBluetooth が利用できなくなったMacのリスト
この影響を受けるであろう、Macのリストは下記のとおりです。
- iMac (Mid 2011): iMac12,x 以前
- Mac mini (Mid 2011): Macmini5,1 以前
- Mac Pro (Mid 2010): MacPro5,1 以前
- Mac Pro Server (Mid 2010): MacPro5,1 以前
- MacBook (13-inch, Mid 2010): MacBook7,1 以前
- MacBook Air (11-inch, Mid 2011): MacBookAir4,1 以前
- MacBook Pro (13-inch, Late 2011): MacBookPro8,1 以前
ハードウェア的な問題
iMac (Mid 2007): iMac7,1 やMac Pro (Early 2008): MacPro3,1 では標準で内蔵されているBluetoothモジュールが動作しないか、Macの動作を不安定にさせる可能性があります。
特にMac Pro (Early 2008): MacPro3,1 では標準で内蔵されているBluetoothモジュールが取り付けられているとカーネルパニックを引き起こす可能性があり、取り外すことをお勧めします。
Zoomが利用できない、起動しない
Zoomのクライアントアプリは一部の機能にMetal を使用しているため、Metal を利用できないMac では使用できない可能性があります。そのため、Dosdude1氏が開発しているバイナリパッチの適用が必要です。
▼ 詳しいパッチの導入方法は以下の記事をご覧ください。
カーネルパニックを起こし、動作が停止する
Mac Pro (Early 2008) :MacPro3,1 をご利用であればBluetoothモジュールによるトラブルが想定されます。Bluetoothモジュールの取り外しをご検討ください。
それ以外にもMac Pro (Early 2008) :MacPro3,1では、組み込みのUSB1.1ポートを利用するとカーネルパニックを引き起こされる事象が確認されている様です。
USB2.0のハブを利用するか、PCIにUSBコントローラを増設するなどしてご利用ください。
それ以外の機種で発生している場合には新しいバージョンのOpenCore Legacy Patcher を試してみてください。
キーボードのバックライトが制御できない
古いデバイスを無理やり新しいOSで利用するために、hidd(Human Interface Device Daemon)を強制的に動作させています。そのため、OSがキーボードのバックライトを見失っている可能性が考えられます。
Lab Tick for Mac を使用するなどして制御できます。
写真と地図のアプリがひどく歪む
Metal が起因した問題です。解像度を下げることによって解決するようです。
サイドバーウィジェットの編集時に「完了」が押せない
Tabキーを押して「完了」ボタンをアクティブにし、Spaceキーを押して完了させます。
ATI TeraScale 2シリーズを搭載したMacで色が乱れる
GPUを換装していないMac Pro 2010~2012やiMac 2010~2011などATI TeraScale 2シリーズを搭載したMacではLegacy GPU Acceleration Patch をインストールした後、画面の一部でも変更されたりすると狂ったように色が高速に変わったりします。
これはATI TeraScale 2のバグによるものですが、色深度を変更することによって改善できるようです。
詳しくはこちらのページにまとめましたので、ぜひご覧ください。
アニメーションの挙動やパフォーマンスが著しく悪い
「DockやFinderなどの色がおかしい」項と同じ問題かもしれません。
ただし、きちんとパッチが当たったにも関わらず、それでも動作が遅い、という場合には、ストレージやメモリがボルトネックとなっている場合があります。カスタマイズができるモデルの場合はストレージを換装するかメモリを増設して様子を見てみましょう。
例えば、メモリが2GBや4GBの場合では快適な動作には厳しいと思います。またSSDに交換できる場合には換装を強くお勧めします。
SSDやメモリ交換方法については下記をご覧ください。
なお、「対応記事」は「機種名」と一致していない場合がありますが、大まかな手順については変わりません。
ただし、MacBook やMacBook Proを除くiMacなどのシリーズについては(特にSSDの感想をする場合には)配線などが一部違う場合があります。適宜読み替えていただき、慎重に作業してください。またパーツのリストについては細心の注意を払って記載したつもりですが、自己責任にて作業、ご購入をお願いいたします。
MacBook
機種名 | 対応記事 | 対応パーツ | 特記事項 |
---|---|---|---|
MacBook (13-inch, Late 2009) | メモリ交換方法 | SO-DIMM PC3-8500 (4GB x 2) SO-DIMM PC3-8500 (4GB x 1) SO-DIMM PC3-10600 (4GB x 1) SO-DIMM PC3-10600 (4GB x 2) | 公称最大容量 4GB ただ8GBまで動作しました。 メモリクロックも本来1066MHzですが、 1333MHzでも問題なく動作しました。 |
MacBook (13-inch, Late 2009) | SSD換装方法 | KLEVV SSD 120GB Crucial SSD 250GB Crucial SSD 500GB Crucial SSD 1000GB (≒ 1TB) Crucial SSD 2000GB (≒ 1TB) | SSDのモデルによっては 相性問題があるようです。 |
MacBook (13-inch, Mid 2010) | メモリ交換方法 | SO-DIMM PC3-8500 (4GB x 2) SO-DIMM PC3-8500 (4GB x 1) | 公称最大容量 4GB 8GB動作報告あり |
MacBook (13-inch, Mid 2010) | SSD換装方法 | KLEVV SSD 120GB Crucial SSD 250GB Crucial SSD 500GB Crucial SSD 1000GB (≒ 1TB) Crucial SSD 2000GB (≒ 1TB) |
Crucial クルーシャル SSD 500GB MX500 SATA3 内蔵2.5インチ 7mm CT500MX500SSD1 [並行輸入品]
キオクシア KIOXIA 内蔵 SSD 480GB 2.5インチ 7mm SATA 国産BiCS FLASH搭載 3年保証 EXCERIA SSD-CK480S/N …
MacBook Pro
MacBook Pro 2012では仕様上、「DDR3」となっておりますが、低電圧の「DDR3L」でも動作しました。
発熱量の少ないDDR3Lの方がパーツ的には優しいです。
iMac
メモリ増設
SSD換装
機種名 | 対応記事 | 対応パーツ |
---|---|---|
iMac (21.5-inch, Late 2009) iMac (21.5-inch, Mid 2011) iMac (21.5-inch, Mid 2010) | 準備中 | Crucial SSD 250GB Crucial SSD 500GB Crucial SSD 1000GB (≒ 1TB) Crucial SSD 2000GB (≒ 1TB) KIOXIA SSD 480GB アイネックス 2.5インチ 変換マウンタ (必要です) iMac 2009~2010 (21.5, 27インチ両用) サーマルセンサー iMac 2011 (21.5, 27インチ両用) サーマルセンサー |
iMac (27-inch, Mid 2011) iMac (27-inch, Mid 2010) iMac (27-inch, Late 2009) | SSD換装 | Crucial SSD 250GB Crucial SSD 500GB Crucial SSD 1000GB (≒ 1TB) Crucial SSD 2000GB (≒ 1TB) KIOXIA SSD 480GB アイネックス 2.5インチ 変換マウンタ (必要です) iMac 2009~2010 (21.5, 27インチ両用) サーマルセンサー iMac 2011 (21.5, 27インチ両用) サーマルセンサー |
iMac (21.5-inch, Late 2012) iMac (21.5-inch, Late 2013) | SSD換装 | Crucial SSD 250GB Crucial SSD 500GB Crucial SSD 1000GB (≒ 1TB) Crucial SSD 2000GB (≒ 1TB) KIOXIA SSD 480GB |
ただしセンサーについては購入しなくても「Macs Fan Control」や「Derman Fancontrol」といったフリーソフトで制御が可能です。
SSD やメモリ はPCやMacの安定稼働に大きく影響します。一昔前は「メモリは規格品だからノーブランドでいい」と言われた時代もありましたが、それは過去の話です。
仕事柄SSDについては多く扱いますが、Kingston以外のKings〇ecやそれに似たメーカは避けるのが無難でしょう。できればCrucial製やIntel、旧東芝メモリのKIOXIA製SSDがおすすめです。
Crucial クルーシャル SSD 500GB MX500 SATA3 内蔵2.5インチ 7mm CT500MX500SSD1 [並行輸入品]
キオクシア KIOXIA 内蔵 SSD 480GB 2.5インチ 7mm SATA 国産BiCS FLASH搭載 3年保証 EXCERIA SSD-CK480S/N …
2012以前のMacでキーボードやマウス、USBが使用できない
macOS VenturaではUSB 1.1のサポートが打ち切られ、多数のMacでキーボードやトラックパッドの他、2012年以前のMac ProではUSB 1.1ポートが利用できません。
2010年以前(Mac Proは2012以前)のモデルをご利用の方はインストール時に別途USB接続のマウスやキーボード、USBハブが必要になります。
これは、macOS VenturaでUSB 1.1のサポートが終了したためで、macOSのインストールが完了し、ボリュームパッチのインストールが完了したら内蔵のキーボードやトラックパッドが利用できるものの、インストール時には利用できません。(執筆時点)
OCLP 0.6.0ではUSB 1.1に依存したMacへのサポートを追加しましたが、依然macOS インストール時にはUSB 2.0以上のハブとKeyboard、マウスが必要になります。
連携カメラが不安定
macOS Venturaの新機能である連携カメラですが、iPhone自体は認識はしているものの、iPhoneカメラの映像がMacに表示されない場合があるなど不安定です。
執筆時点(2022年10月29日)では有効な解決策はなく、当ブログでも解決策を模索中です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
macOS Venturaではグラフィックスタックに大幅な変更を加えたり、USB 1.1のサポートを取りやめたりと、2012以前のMacでは随分と障壁が大きいように思います。
それでは、引き続き楽しいMacライフを!
では!
弊サイトではmacOS VenturaとOpenCore Legacy Patcherの情報を引き続き発信していきます。
2023.10.19 誤記の修正と単語を追加しました。
2023.10.09 日本語入力の情報を追加しました。
2023.10.09 USB 1.1の情報を更新しました。
2023.10.09 改訂版の記事へのリンクに差し替えました。
2023.01.16 ページ内リンクの修正を行いました。
2023.01.16 記事内のリンクを更新、追加しました。
2023.01.16 目次のコードを修正しました。
2023.01.16 記事内のリンクを修正しました。
2023.01.16 記事のカテゴリーを「修理・カスタマイズ」から「Mac」へ変更しました。
2022.11.11 Zoomのトラブルに関して補足を追加しました。
2022.10.30 「インストールまではできたものの起動ができない」などいくつかのコンテンツを加筆しました。