これまで「あのかぼ」ではOpenCore Legacy Patcher (OCLP)を使用したインストールガイドの他、OCLPを使用したMacのブートシーケンスについて解説するページを公開していきました。前回は「OpenCoreの設定」について紹介しました。今回は注入されるKext編です。
この「OpenCore Legacy Patcher のパッチの内容」シリーズでは、Dortaniaの「Explaining the patches in OpenCore Legacy Patcher」で紹介されているパッチの解説を「OpenCoreの設定」と「注入される Kext」、「ルートパッチ」の3つに分けて時より注釈を入れながら分かりやすく解説しています。
目次
注入される Kext
以下は、ブート時にOpenCore Legacy PatcherがメモリにインジェクトするKext (カーネル拡張)についての説明です。
Acidanthera
- Lilu
- 理由: 他のkextをパッチするためのエンジン
- モデル: すべてのモデルで必要
- WhateverGreen
- 理由: GPUフレームワークとkextをパッチして適切なサポートを確保するため
- モデル: スプーフィングする場合や非純正GPUを持つすべてのモデルで必要
- CPUFriend
- 理由: IOx86PlatformPlugin にパッチを適用して以前の CPU プロファイルを復元するため
- モデル: 最小限以上のスプーフィングを使用するすべてのモデル
- AirportBrcmFixup
- 理由: IO80211 および co にパッチを適用して、サポートされていないカードのネットワーク サポートを修正し、ネイティブ カードのバグも修正するため (つまり、ネットワーク パフォーマンスのランダムな低下)。
- モデル: BCM943224、BCM94331、BCM94360、およびBCM943602
- BlueToolFixup
- 理由: BlueToolをパッチしてMontereyでBluetooth機能を有効にするため
- モデル: BCM94360 以前のワイヤレス モジュールまたはサードパーティ製チップセットを搭載したすべてのモデル
- Bluetooth スプーフィング
- 理由: 特定のBluetoothチップセットに認識用の追加データをインジェクトするため
- モデル: BCM2070 または BCM2046 チップセットを搭載したモデル
- FeatureUnlock (Night Shift)
- 理由: CoreBrightness.framework にパッチを適用して、サポートされていないモデルで Night Shift を有効にするため
- モデル: 2011年以前のモデル
- FeatureUnlock (Sidecar/AirPlay)
- 理由: SidecarCore.framework と AirPlaySupport.framework にパッチを適用して、サポートされていないモデルで Mac への Sidecar と AirPlay を有効にするため
- モデル: Metal 対応 GPU を搭載したすべてのモデル
- RestrictEvents
- 理由: MacPro7,1 のメモリエラーーを無効にするため
- モデル: Mac Pro および Xserve
- CryptexFixup
- 理由: 非AVX2.0 CPUに非AVX2.0 Cryptexをインストールするため
- モデル: Ivy Bridge 以前のすべての CPU
- AutoPkgInstaller
- 理由: 自動ルートパッチを許可するため
- NVMeFix
- 理由: サードパーティのNVMeサポートを修正するため
- RSRHelper
- 理由: ルートパッチがインストールされたMacでRapid Security Responseサポートを修正するため
Ethernet (イーサネット)
- nForceEthernet
- 理由: Catalina 以降のネットワークを解決するために古い NVIDIA Ethernet kext を挿入する
- モデル: 2010年以前のNVIDIA Ethernetが必要
- MarvelYukonEthernet
- 理由: Catalina 以降のネットワークを解決するために古い Marvel Ethernet kext を挿入する
- モデル: 2008 年以降の Marvel Ethernet が必要
- CatalinaBCM5701Ethernet
- 理由: Big Sur でのネットワークを解決するために古い Broadcom Ethernet kext を挿入する
- ロジック: 既存の BCM5701Ethernet と衝突しないように、競合するシンボルをパッチする
- モデル: 2011 年以前の Broadcom Ethernet が必要
- Intel82574L
- 理由: MacPro でのイーサネット サポートを解決するため
- モデル: MacPro3,1 – 5,1
- CatalinaIntelI210Ethernet
- 理由: Ivy 以前の Mac での Intel i210/i225 NIC サポートを修正するため
- AppleIntel8254XEthernet
- 理由: MacPro でのEthernet サポートを解決するため
- モデル: MacPro3,1 – 5,1
Firewire
- IOFireWireFamily
- 理由: FireWire ブートのサポートを可能にするため
- IOFireWireSBP2
- 理由: FireWire ブートのサポートを可能にするため
- IOFireWireSerialBusProtoColTransport
- 理由: FireWire ブートのサポートを可能にするため
Maps
- USBMap
- 理由: USB を修正するために古い USB マップ プロファイルを挿入する
- moderate以上のスプーフィングを行うすべてのモデルおよび2012年以前のモデルで必要
SSE
- AAMouSSE
- 理由: SSE4.2命令をSSE4.1互換のコードに変換する。AMD Metalドライバーを使用するする際に必要
- モデル: MacPro3,1
- telemetrap
- 理由: telemetry.plugin が実行されないようにする。SSE4,1 CPU に必要
- モデル: Penryn CPU
Wi-Fi
- IO80211ElCap
- 理由: El CapitanのWi-Fiドライバーを再挿入するため
- モデル: BCM94328、BCM94322、および Atheros チップセット
- corecaptureElCap.kext
- 理由: El CapitanのWi-Fiドライバーを再挿入するため
- モデル: BCM94328、BCM94322、および Atheros チップセット
Misc (その他)
- AppleBackLightFixup
- 理由: NVIDIA Metal GPUにアップグレードされたiMacでAppleBacklightをパッチするため
- モデル: アップグレードされた NVIDIA Metal GPU を搭載した iMac11,x、iMac12,x
- AppleIntelPIIXATA
- 理由: MacPro3,1 での IDE サポートを修正するため
- モデル: MacPro3,1
- AppleIntelMCEDisabler
- 理由: Catalina 以降でデュアルソケットサポートを修正するため
- モデル: Mac Pro および Xserve
- SMC-Spoof (SMC スプーフィング)
- 理由: SMC バージョンを 9.9999 に偽装します
- モデル: 最小限またはそれ以上のスプーフィングを行うすべてのモデルで必要
- AppleRAIDCard
- Xserve に AppleRaidCard サポートを追加するため
- AMDGPUWakeHandler
- 理由: 2011年の15/17インチMacBook ProでのソフトウェアベースのDemuxを追加するため
- AppleIntelCPUPowerManagement および AppleIntelCPUPowerManagementClient
- 理由: Ivy Bridge以前のCPU電源管理を復元するため
- AppleUSBTopCase
- 理由: macOS VenturaでUSBキーボードサポートを復元するため
- AppleUSBMultitouchおよびAppleUSBTrackpad
- 理由: macOS VenturaでUSBトラックパッドサポートを復元するため
- ASPP-Override
- 理由: ACPI_SMC_PlatformPlugin を X86PlatformPlugin よりも優先し、ファームウェアのスロットルを無効にするようにするため
- BacklightInjector
- 理由: GPUをアップグレードしたiMacの明るさを修正するため
- BigSurSDXC
- 理由: Ivy Bridge以前のMacでSDXCサポートを復元するため
- Bluetooth-spoof (Bluetooth スプーフィング)
- 理由: 古いBluetoothを偽装しMonterey以降で動作させるため
- Innie
- 理由: すべてのPCIeドライブを内部ドライブとして表示させるため
- モデル: MacPro3,1 以降および Xserve3,1 以降
- KDKlessWorkaround
- 理由: KDKlessパッチシステムでmacOSのアップデートを支援するため
- LegacyUSBVieoSupport
- 理由: レガシー USB iSight サポートを修正するため
- MonteAHCIPort
- 理由: MacBookAir6,xに標準搭載されているSSDのサポートを修正
- NoAVXFSCompressionTypeZlib
- 理由: 12.4 以降の AVX1.0 より前のシステムでの AVXFSCompressionTypeZlib のクラッシュを防ぐため
- SimpleMSR
- 理由: Nehalem+ MacBook でのファームウェアのスロットリングを防ぐために BD PROCHOT を無効にするため
- LegacyKeyboardInjector
- 理由: MacBook5,2のファンクションキーを修正するため
結局「注入される Kext」って何?
前回の「OpenCoreの設定」と同様、「注入されるKext」もメモリ上に展開され、パッチを適用するものです。これは、OpenCoreがシステムをブートする際に、ESP (EFI System Partition)に格納されたKext (カーネル拡張)をメモリ上に展開し、ハードウェアのサポートを追加・修正します。
「OpenCoreの設定」では、システム全体のブートプロセスと基本的なハードウェア動作を制御・調整し、macOSの互換性と安定性を確保することが目的です。それに対して、「注入されるKext」では特定のデバイスやハードウェア機能に焦点を当て、ハードウェア機能やデバイスサポートを追加・修正することで、macOSの互換性と安定性を向上させることが目的としています。
まとめ
2つ目の読破、お疲れさまでした!
ここまでOpenCore Legacy Patcherがサポート対象外のMacに当てるパッチの説明のうち、2つ目にあたる「注入される Kext」について解説していきました。
「注入される Kext」ではESPに格納されたKextをメモリに展開し、ハードウェアのサポートを追加します。前回の「OpenCoreの設定」と同様にメモリ上に展開しパッチするという点では同じですが、よりハードウェアのサポート追加に焦点を当てています。
続ては「ルートパッチ (On-Disk Patches)」編!
「ルートパッチ (On-Disk Patches)」編ではOCLPユーザおなじみの「ルートパッチ」の詳細について紹介します。ルートパッチでは今回の「注入される Kext」編や、前回の「OpenCoreの設定」と異なり、実際にmacOS をインストールしたボリュームに対し変更を加えるという物です。
最後までお読みいただきありがとうございました!
次の記事でお会いしましょう!
Anokabo v0.0.1 (7/11/2023, 6:08:50 PMをベースにしています。)
改定履歴
v0.0.2 2024.05.24 「ルートパッチ編」へのリンクを追加
v0.0.1 2024.05.18 公開 (公開当初はv1.0として)