Intel、次世代CPUの第12世代Core「Alder Lake」を正式発表

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Intel、次世代CPUの第12世代Core「Alder Lake」を正式発表

米Intelは10月27日(現地時間)、同社の製品発表のイベント「Intel Innovation」の中で、第12世代のIntel Coreシリーズ(Alder Lake)を発表しました。価格は264ドルからで11月4日より発売を開始します。

この12世代のIntel Coreシリーズでは本格的に10nmプロセスノードの製品(Alder LakeはIntel 7を採用)となり、性能向上と省電力化が期待できる製品になるでしょう。

2種類のコアを兼ね備える「Alder Lake」

最上位のSKUであるCore i9-12900Kは16コア/24スレッドの製品です。
第12世代Coreシリーズの特徴として、高性能のコア(Pコア、Performanceコア)と高効率のコア(Eコア、Efficientコア)の2種類を1つの第二搭載するという、まるでスマートフォン向けのSoCのような構成になっています。つまり、Core i9-12900Kも高性能なPコアを8基、高効率なEコアを8基という構成になっており、一見、やや性能が控えめな印象を受けるかもしれません。

しかし、Intelの発表ではRyzen 9 5950X+RTX 3090とCore i9-12900K+RTX 3090を比較した場合、Grid 2019で20%、Troy: A Total War Sagaで30%、Ryzen 9 5950XよりもCore i9-12900Kの方が性能が良かったという事です。

ARMではよく見かける省電力を実現するbig.LITTLE構成ですが、IntelはこれをIntel Thread Directorにより、パフォーマンスをさらに最適化できるよう工夫しました。

Intel Thread Directorで実現する省電力とハイパフォーマンス

Intel Thread DirectorはCPU内部のハードウェアとOSのスケジューラとの中間に存在し、Windows 11などIntel Thread DirectorをサポートしているOSの場合にはOSのスケジューラと連動し各命令をPコアとEコアに割り当てます。この時、big.LITTLEではプロセッサの負荷を監視し、処理を割り当てますが、Intel Thread Directorでは命令なども監視します。それにより優先的なタスクやAIスレッドはPコア、バックグラウンドやスピン・ループはEコアに割り当てるなど、適材適所でコアを使い分けることにより、高いパフォーマンスを発揮するとともに省電力も実現できるという訳です。これはAppleのMシリーズのQoS戦略と似ているような印象も受けます。

DDR5のサポートやPCI Express 5.0など見どころ満載

そのほか、12世代のIntel CoreシリーズではDDR5やPCI Express 5.0をサポートするそうです。DDR4もサポートするという事なので、既存のパーツを流用したいユーザやストックがあるユーザはマザーボード選びにも気を付けたいところです。

12世代Intel Coreシリーズ対応のZ690ではDMIはPCI Express 4.0ベースのDMI 4.0 (8レーン)となり、2015年以来のアップデートとなります。(Z590やH590では4レーンから8レーンになるなど、強化はありましたが。)
その他4つのUSB 3.2 Gen 2×2 ポートやIntel VMD、Intel 2.5G Base-T Mac/PHY Ethernetなどもサポートします。ただし、これらはマザーボードメーカ側が搭載するかはまた別の話になるため、気になる機能については、事前に仕様表を確認していただければと思います。

投入されるSKUはi9-12900K($589)、i9-12900KF($564)、i7-12700K($409)、i7-12700KF($384)、i5-12600K($289)、i5-12600KF($264)となっており、F付きのモデルは内蔵GPUはないものの、その分安価になります。

Ryzen 9 5950Xなど既存製品とのパフォーマンスの比較

先ほども軽く触れましたが、ゲーム性能についてRyzen 9 5950XとRTX 3090の環境とCore i9-12900K+RTX 3090の環境を比較をすると、Shadow of the Tomb Raiderでは「-3%」とRyzen 9 5950Xよりも劣る結果になったものの、Grid 2019で「20%」、Troy: A Total War Sagaで「30%」、Ryzen 9 5950XよりもCore i9-12900Kの方が性能が良かったという事です。

Intelは第12世代のIntel Coreシリーズを「世界最高レベルのゲーミング・プロセッサー」であるとした上で、改めてゲーム市場に対してIntelの存在感をアピールした形となりました。

ただし第12世代のIntel Coreシリーズはゲームに強いだけではありません。クリエイティブな方向でも非常に強力にそのパワーを発揮します。
AdobeAfter Effects Pulseベンチマークで測定した結果によるとCore i9-12900Kと前世代のCore i9-11900Kとで比較するとCore i9-12900Kを使用した最大100%高速なマルチフレームレンダリングが実現できたとのことです。

さらに、先ほどと同様にCore i9-12900Kと前世代のCore i9-11900KとLightroom CC Classicで現像を行い、バックグラウンド タスクでPremiere Proを利用しエンコードを行う場合、前世代のCore i9-11900Kよりも47%高速に処理できたという結果を公開しました。
またCore i9-12900Kと前世代のCore i9-11900Kとでは最大37%高速な3Dモデリングパフォーマンスと、仕事でも遊びでも最高のプロセッサに仕上がっています。

シングル スレッド性能も10世代のIntel Coreシリーズプロセッサと比較した場合、12世代のIntel CoreシリーズのPコアでは28%の性能向上、Eコアでも1%の性能向上と、「高効率コア」というものの十分なパフォーマンスを発揮できます。

パフォーマンスは向上、さらに省電力性能も向上

前世代の製品と比べパフォーマンスは平均19%向上という事ですが、消費電力は下がりました。

例えば、前世代のCore i9-11900Kと同じパフォーマンスをCore i9-12900Kで出す、といった場合には前世代のCore i9-11900Kでは250Wの消費電力でしたが、Core i9-12900Kでは65Wと凡そ1/4程度で再現できます。

また、IntelはTDP(Thermal Design Power)という表記から「Processor Base Power」(=PL1)に変更した上で、「Maximum Turbo Power」(=PL2)を追加しました。これにより、パーツの選定もある程度楽になりました。

各SKUは基本的に、「Processor Base Power」の範囲内で動作し、発熱の状況などに余裕がある場合には「Maximum Turbo Power」まで消費電力を使用できます。そのため、基本的には「Processor Base Power」までの範囲内で動作しますが瞬発的に「Maximum Turbo Power」まで電力を使用する可能性もあり、PCを組む際には「Maximum Turbo Power」も考慮しパーツを選定する必要があります。

冷却面では、 12世代のIntel CoreのLGA1700は、LGA115xやLGA1200のCPUクーラー用の穴と互換性がありません。既存の冷却装置を流用する際には、オプションとして対応するパーツが入手できるのか、それともマザーボード側に旧世代のCPUクーラー用の穴をサポートする機構があるのかを確認してみてください。

ここ数年AMDに苦戦を強いられて来たIntelが満を期して11月4日より発売します。

2021.11.03 タイトルを変更しました。